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文化財

2000年5月


既に新聞などでご存じの方も多いとは思うが、この度当社及び社長宅が文化財として登録される運びとなった。正式には「平成十二年四月二十一日の文化財保護審議会で武重本家酒造及び武重家住宅が登録有形文化財として文化財登録原簿に登録されるよう答申された」というらしい。数ヶ月後に原簿に登録されて始めて文化財となる。(今回の文化財の詳細についてはこちらをご覧ください)

文化財として登録されるのは、社長宅のほとんど全てと、当社の造り蔵などの建物の内、ブロックや鉄筋で建てられたものを除いたほとんどの建物であり、総数三十棟に及ぶ。これは長野県内では最大のものであり、全国でもほとんど例が無い数である。

文化財と言うと「国宝」や「重要文化財」が一般的であったが、平成八年に文化財保護法が改正されて新たに「登録文化財」という制度ができた。これは構築物の中で、「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、「造型の規範となっているもの」、「再現することが容易でないもの」などで、保存及び活用のための措置が特に必要とされるものを文化財登録原簿に登録し、保存活用を行っていこうというものです。

早い話が(文化庁に怒られそうな書き方ですが)、高度成長時代からバブル絶頂期までの間に、そこそこ古い建物がどんどん壊され、建てなおされて、気づいてみたら、江戸時代などの物は残っていても、明治・大正・昭和初期の建物がどんどん無くなってしまっている。このままでは百年後に重要文化財として指定できる建物が無くなってしまう。ということで、早めに手を打っておいた方が良い、という趣旨で出来たように見える。また、欧米に較べて日本は文化財の点数が非常に少ない、という理由も絡んでいるらしい。

結局のところ、戦前の建物のほとんどはこの制度の対象物件となり得るが、その中から地方自治体がある基準で物件を選択し、県を通して文化庁へと推薦すると登録文化財となるのである。

この制度は、修理・改造に関しては比較的自由度が大きいので、所有者側にとってはそれほどデメリットがない制度である。当社の方針の一つに、「先達の財産を大事に使いながら継承し後世に渡すこと」がある。これは皆さん良くご存知のように、建物はもちろんのこと、酒造りの技術(きもと造りなど)や様々な道具(木の道具)を頑なに守り続けていることを見ていただけば明白であろう。

文化財もただ保存しておくだけでは意味が無い。その中で日常の営み(生活であれ、商売であれ)を行いつつ補修すべきところは補修する、改善すべきところは改善する、など手を入れながら長く保存していくことが重要であると考えている。その点において登録文化財制度は当社の方針と相容れる点が多い。そういった理由で今回の登録を承諾した次第である。

造り蔵が文化財になったからといって酒の味が変わることはない。むしろ今まで以上に味を守らなければならない点もあるであろう。しかし文化を守るだけでなく、新しい文化を作り出していくことも現在の我々の使命である。そのためには新しい味の創造、新しい文化の創造にもより一層の努力を払うことを心がけていきたいと思う。

今年も四月十二日に杜氏ら新潟からの蔵人が帰郷した。今年の新酒もしばしの眠りの時期を経て、秋口にはおいしく熟成していることであろう。ご期待頂きたい。

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