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飲みすぎ

1996年8月


日本酒と他の酒を比較して、こんな話を良く耳にする。いわく、「日本酒を飲むと翌日まで酒が残っている。」また、「日本酒を飲むとその晩は喉が乾いて水が飲みたくなる。」という人もいる。だれでも経験のあることであろう。

これは、日本酒のせいなのであろうか。いろいろな見方があるが、私は日本酒のせいではなく、単なる飲み過ぎのせいである。と言いたい。二日酔いはもちろんとして、喉が乾くのもアルコールのせいである。アルコールを分解するときに水分が使われるので、飲みすぎたときは体が水分を要求するのである。

日本酒のアルコール分は約十五%で、これはビールの三倍にあたる。単にアルコール分だけでみると、ビールの中ジョッキ(500ml)が日本酒の一合に相当する。酎ハイやウィスキーの水割りのアルコール分も大体五%前後であろう。濃さは人によって差があるが、缶酎ハイや水割りの缶などを見ると大体が五%内外のアルコール分である。

さて、人によって差があるが、結構な酒飲みでもビールの中ジョッキを二杯もあければけっこうお腹が膨れて満足感がある。ところが、お酒の二合程度では満足できない人も多いのではないだろうか。ビールは炭酸ガスがあるためにどんなにお酒の強い人でもあまり沢山は飲めない。ところが日本酒ならば、中ジョッキ一杯分飲めば約三合ほど飲んだ勘定になる。このように、日本酒を飲むと、同じだけの量しか飲んでいないのにアルコールはたくさん摂取することになる。知らず知らずのうちに飲みすぎている事になるのである。

それでもお燗の場合は、熱燗で三合飲むのは結構大変である。ところが夏は生酒が旨い。充分に冷やした生酒はすいすい飲めてしまう。だから夏は日本酒を飲み過ぎてしまうのであろう。余談になるが、牧水の生酒のビンの注意書きを見て欲しい。

もう一つ飲みすぎてしまう原因としては、お猪口の大きさであろう。最近はお猪口というよりぐい呑みといった杯(さかずき)でお酒を飲むことが多い。生酒のグラスも結構お酒が入る。暇なときに杯にどれくらいの量が入るか試してみてほしい。生酒のグラスなどは五十〜六十ml 程度は入ってしまう。このグラスで三杯飲めば一合飲んだことになる。アルコールはビールの中ジョッキと同じである。

日本酒にたずさわる者としては、たくさん飲んでもらえることはうれしいことであるが、飲みすぎて体を壊してもらうのは嬉しくない。できるだけ体に良い酒の飲み方をして欲しい。

人によって好みもあろうが、飲みすぎを防ぐ方法の中で、私が気に入っている夏の日本酒の飲み方を一つ紹介しよう。大した事ではない。隣で酎ハイを飲んでいる人から氷を一つもらって日本酒のグラスに浮かべるのである。これには二つの効果がある。一つは氷が溶けてお酒が薄まる。これは誰でもすぐ考えつくことであろう。もう一つは、氷の分だけグラスに入る酒の量が減る。この効果も侮りがたい。氷を浮かべる事により、ちびりちびりとお酒を飲むことになるのである。

最後にもう一言。酎ハイを飲んでいる人から氷をもらうときに、できればレモンも一切もらって酒に浮かべてみて欲しい。レモンの酸によって、ぐっと酒が引き締まるはずである。

是非一度お試しいただきたい。

 

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