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大吟醸

2000年3月


二月の末から三月の上旬にかけては、大吟醸ができあがる時期である。一月の中旬から始まった大吟醸造りがいよいよ最後の瞬間を迎える。一ヶ月半の杜氏の苦労が身を結ぶ時である。

皆さんもご存知のとおり、大吟醸はもともとは品評会用の特殊な酒であった。米の精米から始まって最後の上槽(じょうそう。搾ること)までの全ての工程をしっかりと管理できるだけの技術と設備が無ければ品評会に入賞するだけの大吟醸を造ることはできないのである。

一月の中旬から下旬にかけて、一年で一番気温が下がる時期が、大吟醸の仕込みの時期である。麹を造り、酒母を造り、仕込みを行う。大吟醸の米は十数キロずつ小分けにして洗う。これは米の吸水を均一にするためで、杜氏が時計の見つめながら秒単位で米を洗う時間、水に漬ける時間を管理する。

麹を作るときも、均一な麹ができるように、深夜まで麹の手入れをする。麹の上にかける布一枚で麹のできが違ってしまうので、麹の様子を見ながら細心の注意を払うのである。

二月の間は発酵を管理する時期で、米がどれだけ糖分に変わったか、アルコールがどれだけ出たか、などを毎日分析した数字と、毎日の醪の様子をもとに品温をコントロールしながら三十日以上をかけてゆっくりと発酵をさせて行く。大吟醸の仕込みやに並行して、その他の酒を毎日仕込んでいかなければならないので、この期間は杜氏の気の休まるときがない。

この様な苦労を重ねてきても、酒を搾るタイミングを間違うと全てが台無しになってしまう。搾る日が一日ずれただけで、甘味が少なくなってしまったり、苦味・渋味などの余計な味がでてきてしまう。特に最近は品評会でも「呑める吟醸」という観点で審査が行われるので、味のバランスが非常に重要である(昔は品評会用だけのための酒なので、例えば苦味などがあってもあまり減点にはならなかったのである)。

大吟醸を搾るときも、あまり圧力をかけて搾ると余計な成分が染み出してくるので、酒袋から自然に出てくる部分だけを取り分け、これを品評会用の酒として残りの部分とは別に管理する。さらにその中から最もバランスのよい部分を選んで品評会へ出品するのである。

品評会は、春に開催されるものとして、四月の上旬に関東信越国税局の酒類鑑評会、五月上旬の国税庁醸造研究所の新酒鑑評会がある。また、秋にも長野県の品評会もあるので、できあがった酒を貯蔵しどのように熟成させていくかも競われるのである。

今年の大吟醸の出来はまだ分からないが、その他の酒は非常によい酒が出来あがっている。特に当社の特徴である、きもと・山廃造りの酒は非常にやわらかな良い酒である。今年も三月二十日に酒蔵開放を行うが、その時には大吟醸を含めて全ての新酒を試飲していだだける様にするので、ご来場いただき、今年の酒の出来をぜひ味わっていただきたい。

 

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