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皆造・火入れ・帰郷

1998年4月


今年の酒造りの季節が終わりに近づいてきた。甑倒し(こしきだおし)もすみ、大吟醸の上槽も終わり、そして全ての酒を搾り終える皆造(かいぞう)の日を三月の中旬に迎えた。杜氏をはじめとする、新潟から来た蔵人たちが四月の中頃には家へと帰っていく、その日が近づいてきた。

酒の上槽が終わってから約一月間の間、蔵人達は造りの最後の仕上げである、調合と火入れの作業に追われることになる。蔵元によっては、酒を搾るとあまり間を置かずに火入れをしているところも多いようだが、当社では全ての酒が出来揃ってから調合を行い、火入れをする。

御園竹便りNo27「変わらぬ味」でもご紹介したが、当社の普通酒御園竹は、全ての貯蔵タンクの酒の味を均一にして、いつでも同じ味で出荷が出来るように気をつけている。その為の作業が「調合」である。

御園竹として出荷される酒は数十本のタンクで仕込まれる。仕込まれたタンクの一本一本の酒の味は、仕込みの最中の気温や、麹の出来などによって差がある。この酒をブレンドして成分などを均一にするのである。

出来上がった酒を全部入れることができるような大きなタンクがあれば、調合は簡単である。ひとまとめにしてしまえばそれでお終いである。しかし当社にはそのようなタンクはない。また、空のタンクも数は限られるので、若干のテクニックが必要とされる作業である。といっても、そう大したことではなく、出来上がった数十本の原酒を六〜七本ずつの組に分け、一組ずつ調合を行うのである。七本のタンクから七分の一ずつ酒を取り出して一つのタンクに入れる。これを七回繰り返すと七本のタンクに入った同じ品質の酒が出来上がる。

一番難しいのは、全体として品質が同じになるようにするには、組み合わせをどうやって選ぶか、ということである。さらに、全ての御園竹には山廃造りの酒を混和するのでこれをどう選ぶか、なども気を使う所である。さらに、早めに出荷するものと、後で出荷するものでは、熟成期間が一年近く違って来るので、それを考慮して、後で出荷するものは熟成が進みすぎないように、若干すっきりとしたタイプの酒にする、といったことまで気を配らなければならない。

余談であるが、これを、いままでは杜氏が電卓を片手に計画を立てていた。かけ算やわり算が多いので算盤では無理である。当社ではそのために、昔から手回しのタイガー計算機や、発売直後の電子計算機など、計算機には結構な投資をしてきた。

閑話休題、この様にして全ての酒の調合が終わると、あとは澱を取り除くために濾過をして、火入れをして、熟成期間に入っていくのである。

少し前までは三月に入るともう新酒の出荷時期である。皆さんの中でも、三月頃に古酒の予約をされた方もいらっしゃると思う。このところはそういった事も無くなってきた。これは、一つには日本酒の消費が落ち込んで在庫が増え、新酒の切り替わりの時期がずれてきたためであるが、もう一つは、米の精白が良くなったために、熟成期間を長めに取りたいという当社の方針でもある。

今年の御園竹は今までより精白を上げ品質を向上させるとともに、山廃造りを多くすることで味を落とさない様にしたつもりである。熟成後の出荷をお見守りいただきたい。

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