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入蔵、そして麹造り

1995年12月


いよいよ酒造りの季節となった。当社にも新潟から杜氏が酒造技術の専門家たちを連れてきた。蔵入りをする事を入蔵という。

昔から杜氏の出身者は豪雪地帯の農家の人が多かった。農業を生業にしている人達に長い冬の間の雪ごもり生活は大変なことだ。

江戸時代の末期の天保六年(一八三五年)、越後の国の魚沼郡塩沢町の鈴木牧之という文人が「北越雪譜」という七巻の書を著した。その本は江戸で出版されてベストセラーとなった。牧之の生地は現在美味しい米として有名な「新潟越光」の主産地である。

その本によると、その時代から冬の雪の最中は、酒造技術者が全国各地へ出ていた様だ。彼らは自分たちを「出稼ぎ」とは捉えていない。酒造技術の輸出者としての誇りと共に家を離れる。そして、彼らの技術は代々受け継がれて行った。杜氏と呼ばれる技術集団なのである。

そうは言っても、彼等の勤める酒造場はそれぞれ特徴を持っている。気温の変化も土地により違う。また、酒蔵の規模ばかりでなく建物の構造も違う。それ故良い酒を造る酒造場程、彼等を大事にする。同じ家系の杜氏が代々勤める所も多い。当社の中澤杜氏の家系は、四代、約八十年にわたって御園竹を醸造している。それ故、御園竹の味が長く一定しているわけである。

入蔵した杜氏達の最初の仕事は、夏の間使われていなかった道具の手入れである。昔ながらの檜でできた暖気樽 (だきだる)、半切(はんぎり)、壺代(つぼだい)等は、百度の高温の湯で徹底的に煮沸され消毒される。そして日光の紫外線にあてられ、寒気の中で手入れが完了する。

道具ばかりでない。蔵の中も徹底的に拭き掃除される。床や壁はもとより、建物の柱から梁、天井板まで一寸残らず雑巾掛けをされる。昔ながらの手作業で隅々まで拭き掃除をする。この作業は酒造期間中、常時行われる。保健所の役人の方々が一年に一度は見に来られる。以前に来たとき、そっと梁の裏を人差し指でこすられてから、「よく掃除が出来ていますね。埃が少しも付きません」とお褒めをいただいたことも何度かだ。それから食品衛生の点でも、何時もお褒めいただけている。良い酒を造るには、やはり常時の努力が必要なのだと痛感している。

こうして酒造に入るのであるが、一番初めにやらなければならないのは、麹室(こうじむろ)での製麹(せいきく) である。麹といっても、味噌を作る麹の様なラフな作りではない。飯米よりもずっと白く搗かれた米で、中心にまでハゼこんだ麹を丁寧に作るのである。そのための麹室の準備も大変である。ホルマリンを使って涙を流しながら数日間消毒した後に、オキシフルの溶液で板壁を隅々まで拭いて、麹室の掃除が完了するのである。そして麹室が三十度以上に暖められてから、蒸した米が中に入れられる。

最初に使う米は「洗いつけ」といって、大事に手洗いされた後に冷水に浸され、その米が蒸されて麹に作られるのである。

清酒鑑評会入賞

今年も御園竹の大吟醸は、秋の関東信越国税局清酒鑑評会に入賞いたしました。入賞酒と同じ酒を「酔牧水」でお楽しみください。

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