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貯蔵タンク

1995年8月


早いもので、御園竹便りNo.1を皆様にお届けしたのが昨年の六月の下旬であり、先月の13号で二年目に入った。毎月よくも雑文を書き連ねたものであると我ながらあきれている。それよりも毎回、おつきあいにしても我慢して眼を通して下さっている皆様に対して心から御礼申し上げます。

先ほど以前の便りに眼を通してみると、第一号に書いたのが初呑切り(はつのみきり)であった。今年もつい先日初呑み切りを行った。どのタンクの中の酒も健全に貯蔵され熟成されて来ているのが確認された。今年も自信を持って牧水や御園竹を消費者へ供給することができそうである。販売店の皆様にもご安心いただけることであろう。

さて、呑切りをしていて、昔に較べて貯蔵容器が良くなったおかげで酒の貯蔵が非常に楽に、且つ安全になったとつくづく感じた。

今の貯蔵容器のほとんどは、丈夫な鉄製のタンクの表面をガラスと同じ成分の琺瑯(ホウロウ)で被ったものが使われている。この琺瑯は大変丈夫なものである。その琺瑯は、タンクの表面にガラス質の材料が高熱で融解され焼き付けられたものである。大抵は純白のものであるので、上から覗くと酒の変化がわかりやすい。

琺瑯タンクは昔の杉の桶のような独特の香りが全くないため、できた酒の味や香りを純粋にそのまま保つことができる。また温度の変化をそのまま伝えるため、火入れをした酒を自然に冷却して、緩やかに室温に近づける事などができる。また、逆にその外部に冷却剤や冷房機等を利用して急冷したり、過熟を防ぐことなどもできる。

この様な便利な琺瑯タンクが開発され普及してきたのは、昭和も一桁の時代という時期であり、全面的に使用されたのは、戦後の昭和二十年代であった。戦後壊滅した軍需工場や造船工場等の復興に酒の琺瑯タンクの製造が大いに役に立ったのだと、関係者から聞いたこともある。それで木桶の時代は昭和三十五年頃までに琺瑯タンクの時代に世代交代をしたのである。

この様に非常に便利な琺瑯のタンクであるが、長い間使うには手入れが欠かせない。琺瑯タンクの欠点は、酒造りの作業中などにタンクの表面に堅いものをぶつけたりすると琺瑯にひびが入り、酒がタンクの鉄と直接触れる。実は鉄分は日本酒の大敵で、日本酒に色を付けてしまうし、また独特のいやな味が付く。そこで、毎年造りが終わると、杜氏はタンクを入念に点検し、傷が付いたタンクは貯蔵用に使わずに修理に回す。

夏になると酒造メーカーにはタンクの修理業者が訪れる。当社では、毎年八月になると島根県の方からタンクを専門に修理する業者がやってくる。この業者は親子二人で車に乗って全国を回っている。タンクの修理は、ホウロウの表面を削り取り、ガラス繊維の布を貼ってその上をエポキシ樹脂で固める、という方法で行われる。三日以上もかけて修理されたタンクは、再びその年の秋から酒造りに使われるのである。

生酒

牧水本醸造生酒のビンを一新しました。ビンにも印刷してありますが、当社の生酒は、一切加熱処理をしていない「本生」です。届いてすぐに冷蔵庫に入れるなど、管理が大変ですが、味を追求する当社の姿勢をご理解いただき、御協力をお願い申しあげます。

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