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「ごあいさつ」

武重本家酒造株式会社
代表取締役社長 武重有正

このたびは、武重本家酒造株式会社のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。

現在、清酒業界は、規制緩和時代を生き残るために、近代化、省力化をどんどんと進めております。その中で、昔からの道具、技術、文化といったものが失われようとしています。

現に私共の会社でも、米を蒸すための昔ながらの甑(こしき)は連続蒸米機になり、木の槽(ふね:酒を搾る装置) は連続圧搾機になりました。設備を近代化した際に、昔の道具をそのまま保存すればよかったのでしょうが、保存の場所、方法等の問題もあり、ほとんどのものを破棄してしまいました。写真すら残っていないのです。当社でも、その後方針を立てて、残っている道具類を極力保存し、展示するように(といっても、単に並べるだけですが)心がけてはいますが、失われたものは多く、もう取り戻すことはできせん。

失われつつあるのは、道具といった有形のものばかりでなく、無形物、技術もそうです。これは、道具より更に保存が難しいものです。当社では昔ながらの「生もと造り」の技術を保存し、いまでも酒造りの中に活かしています。しかし、技術の進歩の名のもとに失われてしまった技術も当然あります。

馬つなぐべからず【写真:馬つなぐべからず】

これ以外にも、当社には昔の生活を偲ばせる、さまざまなものが残っています。

ほんの一例ですが、当社の通路の柱には、「馬つなぐべからず」という札がかかっています。「馬つなぐべからず」と書いてあるからには、馬をつないだ人がいたわけです。私(常務)の子供の頃には、もうトラックによる配送だけが行われていましたので、私はこれが非常に不思議で、祖母(先代社長夫人)に聞いたところ、小売屋さんが馬でリヤカーを引いてお酒を仕入れに来た頃の話を、とうとうと話してくれました。

しかし、その祖母も亡くなり、そのころの様子を知っているのは、現社長と支配人の二人だけになってしまいました。このままでいると、馬でお酒を運んでいたという話しは、どこにも残らなくなってしまいます。単なる自己満足の感傷かもしれませんが、こういった、様々な事柄の記録をなんとか残したいという気持ちが私の心の中にはあります。

最近は、昔の酒造りの道具や写真を保存し展示する蔵が増えてきました。これに習うという訳ではありませんが、当社でも自社の歴史を後生に残す作業を行おうと決めました。最近になってやっと実用段階に達した「マルチメディア」技術を使うことで、映像・文字を使ってできるだけ「無形」のものを効率的に記録に残すことができるのでは、と考えたわけです。

といっても、従業員二十数名の小さな会社にとっては、このような作業に専従者を割り当てる余裕もありません。そこで、まず、1年ほど前に、以下の方針を立てました。

  1. とにかく、素材を集めること。ビデオでも、写真でも記録に残せるものはできるだけ記録する。
  2. 暇を見つけては、文章を残すこと。

そして、素材、文章が集まってきたところでこれらを整理していくつもりでした。

2.に関しては、「御園竹便り」という、直接取引のある小売店向けに毎月発行するチラシに、社長が読み物を連載することで、わずかずつではありますが作業が進み始めました。しかし、それ以外の作業は、締め切りが存在しないものですから、忙しさに追われて、1年たってもほとんど作業が進みません。今年(平成6年度)のお酒の仕込みの際も、写真もほとんど撮影しませんでした。

そこで、とにかく整理がついたものを公開してしまおう、そうすれば少しは励みにはなるのではないか、と考え、ホームページの開設に踏み切りました。

まだまだ記録と呼ぶにはずかしいほどの内容です。完成までに何年かかるかわかりませんし、満足なものができるかどうかにも不安なところがあります。長い目でお見守りいただければ幸いです。

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